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ある歯車を中心とする自動車・機械部品メーカである。同社はステアリングギア、変速機(手動/自動)などで世界的に有名なメーカであるほか、低床バス用アクスルなどの生産も多い。今回の調査では、同社の本社地区を訪れ、研究所の見学を行い、低床バス用パーツ(アクスル、自動変速機)の担当者との技術討論、低公害バス用コンポーネントとして今後が期待されるモーター組み込みアクスルの担当者との技術討論を行った。
まず、同社の研究所を訪問した。研究所は、本社工場から少し離れた場所に位置し、同社の75周年にあたる1990年に開設された。現在は1期分の建物のみであるが、今後が予定されている。そこではDr.Joachinから、研究所の概要、ZF社全体の概要の説明を受け、所内の見学を行った。この研究所は、もともとは基礎研究を行うことを目的とし、470名の研究者で構成されるが、最近では先行開発や量産開発に近い仕事も担当している。基本的に数値シミュレーションの部門と実験の部門に分けられ、内容は同社の製品に関する、材料、設計、テクニカル計算、騒音対策、部品試作、設計開発、エレクトロニクス、新しいシステムなど、対象は多岐にわたる。研究開発の目標は、従来からの高性能、高機能、高信頼性などの他に、最近では、騒音などの問題が重要視されるようになってきているという。FEMに代表されるCAE技術、ギヤの歯打ち騒音に関する計測技術などに独自の技術を有している。
ZF社は1915年に、ゼッペリンの関連から設立した会社で、エンジンのMTU、航空機のダイムラーベンツ・エアロスペースと合わせて3社が、フリードリヒスハーヘンに拠点を有している。変速機、ステアリングギヤ、アクスルを主要製品とし、72億DMの売上げ、33892人の従業員を有する。(1995年のデータ)ドイツ国内に10カ所の拠点を持つほか、世界各地に工場、支店、関連会社等があり、ワールドワードな構成となっている。日本に関しては、日本支社(ZFジャパン)の他、最近コマツとの合弁会社(コマツゼットエフ・オートモーティブ)を設立し、コマツの粟津工場で商用車用ATを製造することになっている。また東南アジアヘの積極的進出を計画している。
約2時間の研究所滞在の後、本社工場に移動し、昼食を取り、午後はバスコンポーネントに関する説明を受け、技術討議を行うこととした。
まずMr.Bockから、エコマットという名のAT、ならびに低床バス用コンポーネントの解説を受けた。エコマットは同社の中心的レンジのATシリーズの名称で、1978年に初代のものが製造開始されてから、現行のものは5代目にあたる。1995年には12300機の製造実績である。ロックアップ機構(1100rpm以上で)、高トルコン比(2.5〜3.5)、リターダ内蔵、電子制御、小型軽量などの特徴を有している。路線バス用途でのAT化のメリットは様々あり、特にランニングコストにおいては、ブレーキ寿命、燃費、クラッチ交換費、変速機修理費など、トータルな面での得失の比較実績があり、AT化によるメリットが実証されている。
低床バスコンポーネントに関しては、ZF社では、フロントアクスル(独立式、固定式)、リヤドロップアクスル、駆動軸変向機などを製造している。低床バスにおけるエンジンと駆動軸の配置は、いくつかあるものの、後輪をまたぐ通路部の低床化のためドロップアクスルの採用は必須である。同社のものは後車軸上の床面高450mmが実現でき、採用数も多い。アクスルヘの入力軸は縦置きエンジンの90度と横置きエンジン・アングルドライブの80度(いずれも車軸への角度)が基本で、後扉部の低床化には、アングルドライ

 

 

 

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